出産のリアルをつづった『きみは赤ちゃん』
川上未映子『きみは赤ちゃん』、面白いだけじゃなく、時にはダークな部分もあっけらかんと綴っています。自分の弱った姿をこんなにさらけ出せるなんてすごい。
例えば
「夫が眠っていると殺意がわくよ」
よく言われることだけれど、実際に殺意が湧く様子を、本ではこう表現しています。
死ぬほど眠いのに 、眠れない、眠れない・・・起こされる、起こされる、起こされる・・・激痛の肩を丸めて、授乳、授乳、授乳・・・意識は白濁、だらりと口元がゆるみ、半分、白目になった目で、ふと隣を見ると・・・眠っている人がいるではありませんか。(あ・・・眠ってる・・・あべちゃん、眠ってる・・・)
ただ、もううらやましいのである。それがあべであろうがなかろうが、眠れている人がうらやましいのである。飢えた人が、食べ物を食べている人を見るときの心理とはこのような状態なのではないだろうか。
他にも、ホルモンバランスが崩れて旦那さんに八つ当たりする様子も細かく描写されています。その部分だけ読むと、そんな言い方するなんて旦那さんがかわいそうと思ってしまう部分もあります。でも実際自分の身に降りかかると同じことをしそう。この本を読むと、「八つ当たりしてもいいじゃん。できないお母さんでもいいじゃん」と、肩の力を抜いて妊娠・出産をできそう。励まされた妊婦さんは多いんじゃないかな。
個人的には不妊治療のくだりが興味あって面白かったです。妊娠したらまた読もう。