『かなたの子』が描く8つの生と死
何だろう、この、漠然とした恐怖。
すごく、日本的なホラー映画に近い、ジトジトした感じがしました。
血がドビューって出て人がバンバン死んで、悪霊を退治したら無事平和な日常が戻るみたいな欧米のホラーとは違い、『かなたの子』ではあんまり解決しないまま終わります。小説の舞台も日常の田舎だったり、ツアー団体だったりと、どこにでもいそうな人たち。日常に潜む奇妙な世界に触れていきます。余韻が残り、きっとそれぞれが思い描く結末があるのでしょう。
8つのエピソードの中で、私が好きなものは「道理」。
妻とうまくいかず、軽い気持ちで元カノと会った主人公が、「間違った道をこれ以上進むな。面倒が待っている」だの「道理に添わなければ不幸になる」だの元カノから宗教めいたことを言われるようになり、追い詰められていく様子が面白かったです。