タバコ屋モモコちゃん
温泉旅行もかねて、母方の祖父母に会いに九州へ。
初めて旦那を祖父母の家まで連れてきたもんから、おばあちゃんはそりゃもう大喜び。
「あらまあ美男子や!」
「お見合いでもないのにこんな良い人に出会えるなんてねえ」
旦那を見てはあれこれ感想を述べる。
美男子なんて言われたことない旦那は戸惑いながらもまんざらではない顔をしていた。
一通り近況報告を終えた後、おばあちゃんは自分の昔話を始めた。
「私も今は皺くちゃのおばあちゃんやけど、昔は可愛かったのよ」
「他の人たちは皆農業しよった中でね、おばあちゃんはタバコ屋で働いとったんよ。タバコやら切手やら売ってな。皆からはタバコ屋モモコちゃんって呼ばれよったんやから。」
タバコ屋モモコちゃん話のくだりはその後10分間にも及んだ。何十年も昔の話をよくもそんなに覚えているもんだ。でもまあ、自分が一番美しかった頃の記憶は鮮明に残っているのだろう。
おばあちゃんがタバコ屋モモコちゃん話をするときは上機嫌。
気に入ってもらえてよかった。はるばる田舎まで運転してよかった。
モモコちゃんのしわくちゃ笑顔に見送られながら、
私たちは九州を出た。